カール・マルクスの「資本論」は、資本主義経済の構造を深く分析した経済学の古典です。
社会の発展と経済の仕組みを理解する上で欠かせないこの書物は、労働者と資本家の関係、価値の創出、そして資本主義が抱える矛盾について詳細に論じています。
本記事では、「資本論」の主なポイントをわかりやすく解説し、今日の社会との関連性についても考察します。
「資本論」とは?
「資本論」(原題:Das Kapital)は、ドイツの哲学者・経済学者であるカール・マルクスが著した経済学の著作です。
第一巻は1867年に刊行され、第二巻・第三巻は彼の死後にエンゲルスによって編集されました。
この書籍の目的は、資本主義の本質を解明し、その矛盾を暴くことにあります。
価値と剰余価値のしくみ――なぜ資本家は儲かるのか?
資本主義社会では、企業の社長や工場のオーナーなどの「資本家」と、会社で働く「労働者」に分かれています。
ここで、マルクスは「資本家が労働者を搾取している」と指摘しました。
では、その仕組みを簡単に見てみましょう。
1.どうやって搾取されるのか?
労働者は、お金を稼ぐために会社で働きます。
でも、働いた分すべての価値をもらえるわけではありません。
たとえば、工場で働く人が一日かけて100個のパンを作ったとします。
会社がこのパンを全部売って、10万円の売上になったとしても、労働者は10万円もらえるわけではありません。
資本家は、材料代や工場の費用などを払ったあと、残ったお金の一部を労働者の給料にします。
厳密には労働者の給料は以下の3点に必要な額で決まります。
- 労働の疲労を回復し、少しの娯楽で精神的な疲労も回復するための費用
- 家庭を作り子供を成し、将来の労働者を再生産するための費用
- 技術の進歩に追いつくために勉強するための費用
しかし、実はその給料よりも労働者が生み出した価値はずっと大きいのです。
資本家は、労働者が作ったものを売って得た利益の多くを自分のものにするため、労働者は「搾取」されていることになります。
2.なぜ労働者はもっと給料をもらえないのか?
「じゃあ、もっと給料を増やしてくれたらいいのでは?」と思うかもしれません。
でも、資本家は利益を増やすために、できるだけ少ない給料で労働者を働かせようとします。
さらに、工場や会社は競争しています。他の会社よりも安く商品を作れれば、たくさん売れて儲かるので、資本家は「どうやってコストを下げるか」を考えます。
そして、その方法のひとつが「労働者の給料をできるだけ減らすこと」なのです。
結果として、労働者は長時間働いても、生活するのがやっとの給料しかもらえない状況になりがちです。
3.機械が増えるとどうなる?
資本家は、もっと儲けるために工場に機械を導入します。
機械を使えば、短時間でたくさんの製品を作れます。
しかし、その結果、労働者の仕事が減り、給料もさらに低くなってしまうことがあります。
機械によって「仕事がなくなる」こともあり、働く場所を失う人が出てくるのです。
4.資本主義の問題点
マルクスは、こうした仕組みが「資本主義の問題点」だと考えました。
資本家はどんどんお金持ちになり、労働者は苦しいまま。お金を持つ人と持たない人の格差が広がり、不満を持った労働者が「こんな社会はおかしい!」と考えるようになります。
マルクスは「労働者が団結して戦えば、もっと平等な社会が作れる」と主張しました。
こうした考え方は、のちに多くの国の社会運動や政策に影響を与えました。
まとめ
簡単に言えば、「労働者は自分が生み出した価値のすべてをもらえるわけではなく、資本家が利益の多くを取っている」ということです。
そして、資本主義の仕組みでは、労働者の給料は抑えられやすく、不公平な状態が続く可能性があります。
今の社会を見ても、企業の社長や経営者が莫大な利益を得る一方で、一般の労働者が生活に苦しむことがありますよね?
この状況を考えると、マルクスの理論は今でも意味のあるものだと言えるでしょう。
私の資本主義
当ブログを見てくださっている方の多くは(私も含めて)労働者だと思います。
その中には休日出勤やサービス残業など、給料が出ないにも関わらず「やりがい」や「使命」といった言葉でごまかされて、働かされている人もいるでしょう。私も昔はそうでした。
しかし書いてきた通り、会社は資本家が一番得をするものであり、労働者は搾取される存在です。
十分な搾取ができない労働者は会社から追い出される可能性も存在します。
私は政治家や革命家になるつもりはないので、「資本論」のように社会主義革命を起こすつもりはありません(日本の場合、革命が起こらなかったにも関わらず「世界で最も成功している社会主義国」と言われていますが……)。
しかし一方で、自分は「社員」ではなく「労働者」であると考えています。つまり会社に使われる存在です。
私はうつ病を患ってから、もしかしたら会社を辞めることになるかもしれないという考えが常に頭をよぎっていましたし、以前はサービス残業が常態化する会社に勤めていたので会社への忠誠心みたいなものは持っていません。
ここで私が言いたいのは、我々労働者は常に首を切られる可能性があり、またクビにならなかったとしても搾取される存在であるので、副業、もっと進めば起業という選択肢を頭の片隅にでも持っておいた方が良いのではということです。
起業・副業も顧客商売のため、ストレスが無くなることはないかもしれません。
しかしあなたの商売ではあなたが資本家です。場合によっては人を雇う側です。
会社を辞めろというつもりは毛頭ありませんが、自分がちっぽけな労働者であることを自覚し、できれば会社以外に少しでも生活費の足しになる選択肢として副業を考えてみることも良いかと思います。