たまにコピーライティングの専門家の方が書いた本を読んだりしますが、商品を売り込む際にベネフィットを強調するあまりか、ものすごい壮大なストーリーを展開しているものを見かけます。
※ベネフィットについてはこちらの記事をご参照ください

例えばこんな感じです。
家族を愛するリンゴ農園から、
家族を愛するあなたへの、一生の贈り物。
リンゴをほおばる子どもの笑顔。
思い描いただけで、心豊かになる光景ですよね。
でも残念なことに、今……、
子どもたちが夢中になるのは、おみやげにいただいた、
信州限定リンゴ味のチューインガムや、棒つきリンゴキャンディ。
自然本来のおいしさを大切に味わえる子どもたち。
その一方で、工場でつくられたジャンクフードしか知らない子どもたち。
彼らのカラダと健康は、思春期を迎えるときまでに、どれほどの違いが生じてしまうのでしょうか。この大きな違いをつくるのは、子どものときの
ほんのちょっとの、小さな出来事なのかもしれません。
あなたには、こんな思い出はありませんか?
子どもの頃、田舎から送られてきた、箱いっぱいのリンゴ……。
箱を開けたとたん、さわやかな香りがしてきました。
中には葉っぱがついたままの、まさに「採れたて」のものも!
こんな自然本来のおいしさを、子ども時代に体験させてあげたい……。
そんな想いで、ぜひあなたにお勧めしたいのが、長野県佐久高原、
土と水にこだわる専門家・山田晴夫さん一家が、丹精込めてつくったリンゴです。
メダカが泳ぐほど澄んだ小川の近くの樹になった
豊かな土の栄養をぎっしりと詰め込んだ山田農園のリンゴは、
「魔法のリンゴ」と呼ばれています。
芯まで蜜が詰まった実を切り分けると、
それぞれ散らばっていた家族が、一斉に食卓に集まります。
そして一切れを口に含んだとたん、
昔ながらの美しい自然が、目の前にわぁっと広がり、
家族団らんが始まります。
引用:「稼ぐ言葉の法則 神田昌典・衣田順一 ダイヤモンド社」
正直「ちょっと大げさだな」と思うのですが、なかなかどうしてこれが販売手法として使えるようです。
今回はものを売る手段としてのストーリーの使い方について、考えていこうと思います。
〇ストーリーとは何か
ストーリーとは文字通り物語のことです。
最初に引用でご紹介した商品ストーリーもそうですが、個人の成功談などもストーリーに当たります。
個人のストーリーの最後に「この商品で成功しました」的な内容を組み合わせれば、マーケティングコピー一丁上がりです。
ストーリーにはこんなものが想定されます。
- 理想顧客の成功物語
- 理想顧客の心を揺さぶるエピソード
これもまた別記事に挙げた「ベネフィット」に通ずるものがありますね。
〇ストーリーを使うメリットは何か
ストーリーを使うメリットには以下のようなものがあります。
販売に関するメリット
・成約率が上がる
・ファンが誕生する
・ファンの誕生で継続的な収益が得られやすい
ファンが誕生するというのは、商品に対するファンだけでなく、会社や個人としての営業マンにも当てはまることです。「この会社の出すものなら買ってみようかな」とか「あなたが勧めるなら試してみようかな」といった感じです。
個人に関するメリット
・気づかなかった強みが明らかになる
・事業に対する使命感が生まれる
就活生の自己分析みたいなものですね。
個人の経験を棚卸することで、改めて自分にどんな強みがあるのかを認識できるというメリットです。
また、ストーリーを実際に思い描く(できれば書く)ことによって、「これを成し遂げるために今この作業をしているんだ」といった使命感が生まれるのもメリットの一つにあげられるかと思います。
〇ストーリーの実例と分析
ではストーリーにはどのようなものがあるのでしょうか。とある本に載っていた例から取り上げてみましょう。
大手ハウスメーカーで営業マンだった菊原智明さんは、何をやっても成果に結びつかず、見込み客からは「また来たの?」といった顔をされるという日々。
7年連続成績が上がらず人生のどん底であがいていました。
もともと人見知りで顧客への積極的なアプローチが苦手だった菊原さんは、会社が推奨する体育会的な営業方法にも疑問を感じていました。<中略>
転機は、社内資料として作成した「家を建てたお客様の後悔のエピソード集」でした。
そこには、これから家を建てるうえで参考になる情報がたくさんまとめられていました。
「これをお客さんのところへ定期的にもっていこう!」と思い付いた菊原さんは、さっそく行動に移します。
3号目の配布が終わったあたりからポツポツと顧客から問い合わせが入るようになり、「営業観が変わった」ことを実感します。
このお役立ち情報を提供するだけでお客様から声をかけてもらえるのです。
「もう二度と迷惑訪問をしなくていい」というだけで、うれしくて飛び上がりたくなるような思いだったそうです。それまで年間4件の契約が限界だった菊原さんは、気がつけば8か月連続で契約を達成し、そこから4年連続でトップ営業マンとしての活躍がスタートします。
特筆すべきは、顧客と信頼関係を築く「アプローチレター」、反応を得る「レスポンスレター」、顧客の背中を押す「クロージングレター」とストーリーを活用して営業プロセスを3段階に体系化し、「誰もが使える効果的な営業の仕組み」を確立したことです。その後、「かつての自分のような、売れなくて悩んでいる営業マンをサポートしたい」という思いから起業し、現在では営業コンサルタントとして営業マンや経営者向けのセミナー、研修を開催。営業に関する書籍は50冊以上出版し、大学生向けに「営業の授業」を行うなど多方面で活躍しています。
引用:「ドラッカー理論で成功する ひとり起業の強化書 天田幸宏 藤屋伸二 日本実業出版社」
この事例では以下のような組み立てになっています。
・売れなかった時代の失敗話
・「できなかったこと」が「できるようになった」話
・商品開発(サービス)の話
・商品にかける使命感
ここでは営業マンだった自分の「失敗談」を用いることがミソになっています。
もしこれが初めからコミュ力に特化した営業マンの話だったら、「それなら成功して当然でしょ」で終わってしまいます。
「失敗談」を用いるから、その後の成功話が引き立つのです。
また「失敗談」という自己開示をしたことにより、お客様との距離がぐっと縮まるというメリットもあります。
お客様は営業マンの失敗談という人間的な部分に魅力を感じて、その後のストーリーに魅せられていったのです。
もう一つ、ブロガーのきぐちさんの話を例にとってみましょう。
こちらはストーリーとして書かれたものが長いので、箇条書きにしていきます。
[ブログで5億円稼ぐまでの道のり]
・フリーターとしてブログを始めるも、3年間収益ゼロ(失敗談)
・色々勉強して、「読者の知りたいこと」を書くようにして月収1,000円発生(「できなかった」が「できるようになった」)
・「誰かの役に立っている」感覚が欲しかった(商品開発の話)
・ブログで稼ぐ効率的な方法を発信(商品にかける使命感)
若干解釈に無理が混じったかもしれませんが、大体のところは掴めているかと思います。
世界で見ればどうだかわかりませんが、日本人は「できないことが努力してできるようになる」ということに感動を覚えるところがあります。
2013年に発売された書籍の「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」(KADOKAWA)、通称「ビリギャル」も、「学年ビリ」という「できないこと」が「慶応義塾大学合格」という「できるようになった」話です。
この本は100万部を突破するベストセラーになり、映画化もされました。
また好きなアイドルや野球選手を応援する、いわゆる「推し活」もその一つです。推し活をする人は、売れないアイドル(できないこと)が段々と成長していって徐々に売れるようになる(できるようになる)のを応援するのが楽しいし感動するそうです。
私も推しの野球選手が活躍してくれると嬉しいと思いますね。
〇ストーリーをどのように販売に持っていくのか
さて、ここで少し身の上話をさせてください。
私は大卒で企業に入り、一生懸命働きました。
しかし業務過多が原因か分かりませんが、うつ病になってしまい、休職期間が過ぎてクビになってしまいました。
うつ病も治っておらず、転職活動をすることもできませんでした。
ただ、うつ病でも比較的調子のよい時は文章を書くことができたので、ブログを始めてお金を稼ぐことを考えました。
しかし自分はネットには詳しくないし、ブログのように何か物を書いて人に伝えるという経験にも乏しかったため、書けども書けども誰もブログを見ないという日々が続きました。
そこで私はSEOやWebマーケティング、心理学などの本を大量に読んで勉強しました。
その手法を取り入れることによって、徐々に私のブログを見てくれる人が増え、それにつられて収益も上がるようになってきました。
今では一人で食べていく分にはギリギリの収益を確保することができています。
私はこの体験を経て、自分のようにうつ病で苦しんでいる人や会社に適合できずに悩んでいる人向けに情報発信がしたい。
Webでならブログに限らず様々なことを一人でもできるようになるから、その人の手助けがしたいと思うようになりました。
そうしてできたのが現在ご覧いただいているブログ、「マーケティングと心理学」です。
私はこのブログを通じて、会社に適合できない人でも、一人で何とか食うには困らない程度の収益が得られるように、ブログ技術や販売技術を伝えたいと思い、記事を書いている次第です。
自分はもう会社に行きたくないと思っている方、すぐには無理かもしれませんが、一人で食っていける程度の収益を上げられるようになりませんか?
「マーケティングと心理学」ではその志を応援したいと思います。
どうですか?少しは「このブログを見てやってもいいか」と思っていただけましたか?
ちなみにこの書いた内容は事実を色々とアレンジした作り話です。
本当のところを明かすつもりは今のところありません。どこからどこまでが本当かも、教えません。
ただこのように、ストーリーを書いていって最後に商品を紹介するという手法を用いることによって、ストーリーに感情移入したお客様が買ってくれるという期待を得ることができます。やり方の参考にしてみてください。
〇まとめ
以上のように、商品や売る人・企業に関するストーリーは販売活動に有利な影響を与える側面があります。
「失敗談」から始まって努力して「成功する」。その成功を生かして商品を作り上げる。その商品にはその人・企業の使命感がこもっている。
土曜日の夜に放送されている「ジョブチューン」では商品開発の担当者が開発秘話をよく明かしていますが、それも商品に関するストーリーと言えるかもしれません。
もしもご自身を振り返る機会がありましたら、そこからストーリーを意識してみるのも良いかもしれません。案外売れる要素になるかも分かりませんよ。