顧客に商品を売るとき、売る側としては「いかにその商品が優れているのか」という点に着目して売り込みをかけてしまいがちです。
しかしながら、それではお客様が振り向いてくれることは難しいです。
それは売る側の人間が、自分が売ることに集中していて、顧客目線を見失っているからでもあります。
ではどのようにして売れば良いのでしょうか。
それは顧客に対して商品の「メリット」を強調するのではなく、その商品が顧客に対して「ベネフィット」を提供できることを示す必要があります。
今回は販売活動における「メリット」と「ベネフィット」の違いについて考えていきます。
〇メリットとベネフィットの違いは何か
「メリット」と「ベネフィット」はともに似たような意味という印象を受けると思います。
すごく簡単に言えば、「メリット」をより煮詰めたものが「ベネフィット」です。
メリットとは、商品の長所や価値などの利点のことです。
例えば車ならば「燃費が良い」「容量が大きい」「かっこいい」などがメリットになります。
一方ベネフィットとは、その商品を使うことによって得られる顧客のメリット、もっと言うと顧客にとっての良い未来の獲得や悪い未来の回避のことを言います。
例えば車の場合は「燃費が良いことにより、毎月のガソリン代を節約できる」「容量が大きいことにより沢山買い物をしてもすべて積むことができる」「かっこいいので周りの人間に自慢できる」といった具合です。
メリットとベネフィットの違いは、メリットのその先、お客様にどのようなメリットを提供できるかまで言及しているかどうかの違いです。
〇なぜベネフィットに訴求する必要があるのか
ではなぜメリットではなくベネフィットを考えなければならないのでしょうか。
それは「売る側が顧客目線に立つため」と「顧客に当事者意識を持たせるため」です。
売る側が顧客目線に立つため
「売る側が顧客目線に立つため」というのは、商品を売る人間としてはどうしても「売りたい」という願望が強く出てしまい、それがお客様にとって本当に必要なものなのかを考えることがおざなりになりがちです。
そうではなく、ベネフィットを意識することによって、お客様が何を求めているのかを意識することができます。
単に「この商品はこんな部分が優れていますよ」だけでは売り手の目線です。
その優れた部分がお客様にとってどのようにプラスに働くかを考えてこそ、顧客目線に立って商売をすることです。
言うは易しですが、実行に移すのはなかなか難しいですよね。
顧客に当事者意識を持たせるため
もう一つ、「顧客に当事者意識を持たせるため」というのは、ベネフィットに訴求することによって、お客様に「こんな未来が手に入るなら」とか「心配事から解放されるなら」とか、そのような意識を持ってもらえるからです。
顧客は宇宙人ではなくて人間ですので、何かしらの欲望や問題を抱えている可能性が高いです。
その人達に、「この商品を使えば○○になれるよ」とか「心配する人が多い○○がなくなるよ」といった訴求をすることで、「え、これ私にぴったりの商品じゃない?」と思ってもらえるようになります。
これら2つの理由から、売るためにはメリットだけでなくベネフィットまで訴求して販売を行う必要があるのです。
〇ベネフィットとは具体的にどのようなものなのか
ベネフィットとは、商品が顧客にもたらす利益、もっと言うと未来を示す言葉でした。
ではベネフィットにはどのような書き方があるのでしょうか。
有名なのはジャパネットたかたです。
ジャパネットたかたの高田社長は、元々町のカメラ屋さんでした。
彼は「観光写真」という、ホテルの宴席や懇親会へ出向いて写真を撮る仕事をしていました。
写真を晩に撮って現像し、その翌日に朝食会場で販売したのです。
彼はただ宴席や懇親会で写真を撮っただけではありませんでした。
顧客が下を向いている写真は売れないことに気が付いたのです。
彼は顧客の県民性や職業などを研究して会話術を磨き、いかにカメラの方を向いて写真を撮らせてもらうかに尽力しました。
その結果、彼の写真はその9割が顧客の顔がきちんと写ったものでした。
顧客は喜んでその写真を買っていったといいます。
彼がやっていたその行為こそ、「ベネフィットを売る」ということです。
写真をただ売ることが商売ではなく、お客様に満足してもらうことこそが商売。
ここで言うならばお客様が笑顔の写真を撮ることで、お客様の思い出を作ることがベネフィットだったということになります。
ベネフィットの例は、その商品を使うことによって顧客にどのような未来を提供できるかを考えると出てきやすいです。
例えばダイエット商品の場合。「この商品を使えば高い確率で瘦せることができますよ」ではメリット止まりです。
そうではなくて、「この商品を使って痩せれば、あなたのスタイルが良くなり水着が着やすくなりますよ」とか「学校の健康診断で体重を気にしなくて良くなりますよ」とか、お客様の具体的な未来を思い描くのです。
あるいは英語教材の場合。「この教材を使えばTOEICのスコアが上がりますよ」ではメリット止まりです。
「この教材を使うことによってTOEICのスコアが上がり、就職活動で強みになって希望の会社に入りやすくなりますよ」とか、「英語が得意になって英検準1級を取得でき、大学受験で有利に働くことで希望の大学に行きやすくなりますよ」とか、「英語がペラペラな同僚と並んでもコンプレックスを感じずに済みますよ」などがベネフィットとなります。
〇まとめ
今回は「メリット」と「ベネフィット」の違いを解説し、なぜベネフィットに訴求することが大事なのかや、実際のベネフィットの考え方について書いてきました。
私自身、最初にWebブログで販売記事を書いた時は、証券口座のメリットばかりに目が行っていました。
つまり、いかに手数料が安いかとか、初心者に優しいかとか、スペックに関する情報を羅列するだけだったんですね。
しかしベネフィットの概念を知ってから、「手数料が安いから株式の売買を気軽に行える」「操作が単純だからネット初心者も迷わず使うことができる」といったふうに、顧客に寄り添った記事を書くことができるようになりました。
今回例として取り上げたジャパネットたかたの高田社長は、お客様のベネフィットを捉えて大成した名経営者です。
言い換えれば、ベネフィットを使って成功した例が、日本人なら誰でも知っているであろう通販サイトの経営者に存在するということです。
個人的な感想になりますが、ベネフィットを考えることはちょっと大げさで恥ずかしい面もあります。
でも上手くいくかはともかく、優れた彼のやり方を真似して質の高い販売文句を考えてみるのも販売手法の一つだと思います。試してみるだけの価値はあるかと思われます。