明確に競合他社より優れていたり、メリットの大きい商品だったりするのに顧客が振り向いてくれないことがあります。
「こうなりゃ自分で買ってやる!」と思うような商品ですね。
まあ自分で買っても良いのですが、商品が優れているのに買ってもらえないというのはなんだかすごくもどかしいものです。
何か対策はないものでしょうか……。
プロスペクト理論を使って「買わなきゃ損」を演出する
これを書いている2025年4月初頭はトランプ政権による関税政策によって株価が大きく下がりました。
私はそれ以前に十分株価が下がったと思ったタイミングで2銘柄を保有していましたが、今回また株価が下がってしまいました。
私は下がった株価を見て、「もっと待ってから買えばよかった。こんなに安くお買い得になるなんて……。」と思いました。
……はい、これがプロスペクト理論です。
顧客に対して、「こんなにメリットの多い商品なのに買わないなんて……。」とか「明らかに競合他社よりも優れているのに……。」とか思わせることによって、顧客自身がとった「買わない」という行動が損だと認識させるのです。
思えば私が大学生の時にウィーンへ留学に行った時、客引きのお兄さんにオペラの鑑賞チケットを勧められました。
私は面倒ごとが嫌なので断ったのですが、お兄さんが一言、「ウィーンでオペラを見ないで何するの!?」。これがいつまでも心に残っていて、せっかくだからあの時オペラを見に行っていれば良かったなあと思うものです。
……はい、これもプロスペクト理論です。
プロスペクト理論って何?
プロスペクト理論とは、行動経済学の理論の一つで、人が意思決定をする際にどのような心理的な傾向を持つのかを説明するものです。
1979年にダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーによって提唱されました。
この理論のポイントを簡単にまとめると:
- 損失は利益よりも心理的に大きく感じる たとえば、1万円を得た喜びよりも、1万円を失った悲しみの方が大きく感じられる傾向があります(これを「損失回避」傾向と呼びます)。
- 意思決定は絶対額ではなく「参照点」によって左右される 人は「今の状況」や「期待」などを基準にして判断し、単純な損得計算ではなく、心理的な影響を受けます。
- 確率の捉え方が直感に基づいて偏る 例えば、ほぼ不可能な「宝くじの高額当選」は現実よりも可能性があるように感じる一方で、実際には高確率で成功することでも「失敗の可能性」に過度に不安を抱くことがあります。
例えば、以下の問題があるとします。あなたはどちらを選びますか?
A.100%当選する5万円の宝くじ
B.50%の確率で10万円当たるが、50%の確率で何も得られない宝くじ
この場合、ほとんどの人はAを選択したと思います。ちなみに期待値はどちらも5万円で一緒です。
今度は別の問題を試してみましょう。あなたはどちらを選びますか?
A.100%の確率で5万円を失う宝くじ
B.50%の確率で5万円を失うが、50%の確率で何も失わない宝くじ
もはや宝くじではなく貧乏くじですが、この問題では同じ期待値でもBを選んだ人が多いと思います。何も失わない可能性に賭けたのですね。
このように、人間には「得をするパターンでは確実に取りに行く」が、「損をするパターンはリスクがあっても損をしたくない」と考える性質があります。
このプロスペクト理論は、経済学だけでなくマーケティングや経営戦略にも活用され、企業が消費者の心理を考慮した価格設定や広告戦略を立てる際に役立っています。
プロスペクト理論を使ってみよう
プロスペクト理論はランディングページにこのように使用することができます。
「このままではあなたは確実に100万円分の機会損失を被ってしまいます」
「あなたの時間が刻々と失われてしまいます」
「募集人数に達したら募集を終了します。今後同じものを開催する予定はありません」
このように、「この商品(サービス)を買わないと損をしてしまう」「この機会を見逃すと損をする」といった感じに顧客に思ってもらうことで、購入を後押しするのです。ちょっと脅迫みたいで気が引けますかね。
またプロスペクト理論は他にも以下のような使い方ができます。
価格表示の工夫(アンカリング効果) 高価格の商品を先に見せ、その後に通常価格の商品を提示することで、後者が「お得」に見えるようにする。
期間限定・数量限定のキャンペーン 「今だけ50%オフ」「残りわずか!」といった表現で損失回避の心理を刺激し、購買意欲を高める。
バンドル販売(セット価格) 個別に購入すると高く感じるが、セット価格にすることで「得をしている」と感じさせる。
損失よりも利益を強調する広告 「このサプリを飲めば健康を維持できます」よりも、「飲まなければ健康を失う可能性があります」といった損失回避の心理に訴える広告の方が、影響力を持つことがある。
フリー戦略(無料お試し) 無料で試すことで「損をしない」状態を作り、一度利用すると「使わなくなると損」という心理が働き、継続利用につながりやすくなる。
比較価格の提示 通常価格と割引価格を並べて表示し、「本来の価格からこんなに値引きされている」と感じさせることで、お得感を演出。
まとめ
プロスペクト理論とは、人間に存在する「得をするパターンでは確実に取りに行く」が、「損をするパターンはリスクがあっても損をしたくない」と考える性質のことです。
今回はランディングページを想定して期限を設定することに使用しましたが、他の使用例にも挙げた通り、セット販売や無料お試し販売など、ランディングページ以外にも使用することができます。
またこのプロスペクト理論は株式投資にもよく使われる理論で、小さい利益を大きく感じ、また損失をより大きく感じて過剰に反応してしまうことを言うものでもあります。
株式投資をする方は一時の損失にあまり過剰にならないよう、また小さい利益で大喜びしないように気を付けてください。
もしそうなりそうなときはプロスペクト理論というものが存在することを覚えておいてください。